第31回 五葉松と二葉松

 私が管理している塩尻の土地に五葉松が一本あります。五葉松と言うと盆栽に使う小さな木を連想しますが、この樹は既に大木になっています。

 この木は私が35年ほど前に出張で訪問した北海道の道立十勝農業試験場の門のそばに生えていた苗をチリ紙に包んで持って帰って育てたものです。まさかこれほどになるとは思いませんでした。この写真は五葉松の苗ですが、上の大木とは別の個体です。

五葉松なので葉が5本生えています。右はアカマツで葉が2本です。

 写真が下手でわかりにくいのですが左が五葉松、右が二葉松のアカマツです。

 

 学名はチョウセンゴヨウらしい。外来種とされていますが、在来種の可能性もあるらしい。外来と言っても江戸時代以前に持ち込まれたもので、秀吉の朝鮮出兵の時に兵士が持ち帰ったとの伝説があります。

 特徴の一つは巨大な松ぼっくりです。左が五葉松、右はアカマツです。

 この巨大松ぼっくりの中にやはり大きな種が入っています。この種は食用になるそうです。左の列が五葉松、右には大きさを比較するために落花生を並べてみました。

 この30年ほどの間にマツノザイセンチュウによって関東以南の平野部の松林はほぼ消滅してしまいました。五葉松はどうかと調べてみたら、アカマツなどよりもむしろ弱いと書いてあってがっかりです。しかし、現場では枯死した事例が少ないとも記述があり、要するによくわからないようです。真正抵抗性はなくても圃場抵抗性(感染はするが病気にかかりにくい、あるいは病気が軽く済む)があったら面白いと思います。

 広大な森林を相手にした線虫対策は農薬では難しいでしょうから抵抗性品種を育成するしかないと思います。チョウセンゴヨウの遺伝子が何かの役に立てばうれしいのですが。

 塩尻の山間部は寒冷地なので、マツノザイセンチュウの拡大が遅く、まだアカマツが残っています。しかし、それも次第に枯れています。もしこのチョウセンゴヨウの大木が感染したら、切り倒して片付けるのは重機が必要で、素人では無理です。何とか生き延びて欲しいものです。

 なお、五葉松、二葉松の他に三葉松もあります。高野山に三葉松があって、仏具の三鈷に似ているので信仰の対象になっていると聞いています。そのうち見に行ってみます。世界的には三葉松は珍しいものではありません。