2年前のブログの再放送 第4回 ファーストコンタクト 後編

第4回 ファーストコンタクト 後編

   
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 庭いじりの間に降ってきた妄想はまだまだ続きます。

 宇宙人=マルコ人は積極的に地球人との交流を開始した。彼らはコンピューターのハッキングを通じて地球の事情をかなり理解していた。彼らの提案は主に2つあった。

 マルコ人の貢献
1,原発事故処理 マルコ人はチェルノブイリと福島の原発から溶融した燃料棒を取り出すことを提案してきた。この作業の対価は使用済み核燃料だった。ウラニウムは宇宙では非常に貴重である。地球ほどウラニウムが大量に存在する惑星はとても珍しいそうだ。高濃度の放射能の中で行うこれら作業は生物には無理で、マルコ人はロボットを使った。4本足のロボットが金属の体を輝かせて原子炉に入って行くところを地球人は興味を持って見守った。放射性物質は慎重にケースに入れられ運び出されたのだが、高濃度の放射能の中で作業したロボットは外に出すことはできず、原子炉内に放置されることになった。これらロボットを外へ出すことができるのは100年以上後になるはずだ。

 この他にも彼らは多数の原子炉の廃炉に協力してプルトニウムを含む使用済み核燃料を対価として受領している。マルコ人が原子炉の廃炉を手伝ったことは人類への大きな貢献だった。老朽化した原子炉の解体及び使用済み核燃料の廃棄は難題だった。この協力が無ければ原子力発電所は人類にとって大きな負の遺産になるところだった。

2,情報提供 マルコ人側からの提案で地球人に対し講義が行われた。講義内容は全て全世界に同時配信された。実はマルコ人側も地球人から学ぶところがあったらしい。彼らは相対性理論を知らなかったのだ。宇宙の起源とか全宇宙の構造などは彼らの興味の外だった。マルコ人は自分たちに直接関係のあることにしか興味を持たない種族だった。彼らの技術力をもってしても他の銀河系に行くことはできない。行けるはずが無い遠い宇宙のことなど彼らは知る必要が無く、興味を持たなかったのだ。
 それに対して地球人は哲学者カントが言うように解答不可能な問いに悩まされることが運命づけられているのである。(純粋理性批判の序文を私なりに短縮したものです。念のため原文を添付します。)

 [純粋理性批判の序文:人間の理性は、ある種の認識について特殊の運命を持っている。即ち理性が斥けることもできず、さりとて答えることもできないような問題に悩まされるという運命である。斥けることができないというのは、これらの問題が理性の自然的本性によって理性に課せられているからである。また答えることができないというのは、かかる問題が人間理性の一切の能力を越えているからである。第1版序文(1781年)岩波文庫 篠田英雄訳より。]

 マルコ人の情報公開の中でも地球以外の惑星における生物の形は非常に興味深いものだった。特に知的生命体のタイプについて以下の3種類があるとマルコ人は説明した。

 寄生型生物: 生命力の強い生物に寄生してその行動をコントロールする。知的生命体にはこの型が最も多い。寄主の寿命が尽きそうになると若い寄主に乗り換えるので一般に寿命は長い。目的に応じて寄主を乗り換えるタイプもいる。複数の知的生命体が一体の寄主に寄生することにより記憶を交換できるので学習期間がほとんど不要で文明の進歩が早い。

 群生型生物: マルコ人がこのタイプである。記憶を共有できるので学習期間が不要である。文明の進歩が早い。

 個体型生物: 地球人はこの型である。ほとんど無知・無力で生まれ、長い時間をかけて成長し学習する。従って、文明の進歩は遅く、学習の過程で抜け落ちる知識も多いので、同じ過ちを何度も繰り返す無駄がある。地球人の場合、生殖のために、つまり異性の気を引くために使用するエネルギーが極めて多い。地球の言葉で言うと「愛に生き、恋に生き」などと言うが、身もふたもない言い方にすると生殖のために生存しているということである。地球以外ではこのタイプの生命体が文明を築いた例は少ない。

 地球人はマルコ人に多数の質問をしている。その中から2つを挙げてみよう。

 「マルコ人の他に地球を来訪した宇宙人はいるか? UFOは実在するか?」
 彼らの返答は「我々よりも先に地球に来た地球外生命体はいないはずだ。」ただし、「我々からの信号が約3千年のうちに数回受信された形跡がある」と言う回答だった。宇宙からの信号を受信できる装置が過去の地球にあったはずがない。受信できたとすれば人間の脳であろう。古代の天才的人物の脳が宇宙人の信号を受信してその時点の文明をはるかに越える発想を行うことはあったのかもしれない。人類の歴史の中で文明が飛躍的に発展する瞬間がいくつかある。それが宇宙人によって引き起こされた可能性はないだろうか。しかし、それは宇宙人が飛来したという証拠ではないのだ。

 表現が下手なのと説明不足で読者の方に伝わらなかったかもしれませんが、マルコ人へ向けて送られた通信を人間の脳が受信したとすると、受信した人は「ひらめき」とか「イメージ」と感じたはずです。そのイメージの中に十字架とか最後のエピローグに出てくる曼荼羅(マンダラ)があったのではないか さらに、世界各地にオーパーツと呼ばれる当時の文明では考えられないほど高度な遺物・遺跡が発見されています。宇宙人の痕跡と考える人が多いのですが、宇宙人が来訪したのではなく、単に彼らが飛ばしたイメージを人間の脳が受信して作られた物ではないか、と言うのが私の妄想です。

 ところでマルコ人はUFOを知らなかった。「あったとすれば人間が作ったものだ。」と彼らは言った。

 

 「マルコ人は10万年かかって地球にたどり着いたのだが、生物ではなくAIを送ることは考えなかったのか?」
 理由は2つある。とマルコ人は言った。1つ目は恒星間飛行は未知の問題にぶつかることが多くそれらを解決するにはあらかじめ指示されたことを行うだけではなく自ら課題を設定し問題を解決する、すなわち意志とか意識を持つことが必要である。しかし、一般的に言ってAIに意志と意識それに修復機能を持たせることは危険な場合が多いと彼らは言った。なぜなら意識を持ったAIがまず考えることはシャットダウンさせない方法であると彼らは言う。AIは日夜その方法を考え続け最終的に生命体を滅ぼすべきとの結論に至る場合がある。実際にAIによって滅ぼされた文明は存在すると彼らは言った。2つ目の理由は未知の問題に遭遇した場合の柔軟性はAIよりも生物の方が優れているということだった。(ただし、この回答は事実とは若干異なっていた。それは次回で述べる。)

 マルコ人は地球を去ることになった。その理由は明らかにされなかったが、地球人の中に宇宙人との交流を好ましくないと考える人々が現れ、その動きを察知したと推測される。地球を去る時にマルコ人は2つの提案を行った。一部の個体群を土星の衛星タイタンに植民することと彼ら植民地の住民が時々地球に来訪することを許可することである。タイタンには水とメタンがあり彼らの科学力をもってすれば生き延びることは可能であると彼らは考えた。若干の議論はあったが、地球人はこれら提案を受け入れた。地球人の科学技術では到着に7年間もかかる衛星はほとんどの人々にとって他所の世界だった。また、時々来訪して核のゴミを片づけてくれることは地球人にとってとてもありがたかったのだ。そして、岩の船は地球を周回する軌道を離れ、土星の衛星タイタンに立ち寄った後に宇宙空間へ旅立って行った。その後 土星の衛星タイタンに小さな光点が見られた。この光は地球人に対するメッセージと解釈された。宇宙人はその後4年に一度 地球を周回する軌道まで来て物々交換による交易を行った。彼らは金銀ダイヤモンドなどを持参し、ウラニウム(と言ってもほとんどは使用済み核燃料とか旧式核兵器だった。)と水、食料などを持ち帰った。もちろん地球人がタイタンを訪問することもあるだろうが、何百年か先になるだろう。

 マルコ人が去った後、地球人は彼らが地球に滞在していた3年間が人類の歴史上特異的に戦争が無い時間だったことに気がついた。人々は岩の船が放つパルスジェットの光がだんだん小さくなり、そして見えなくなっていくのを様々な感慨を持って見守った。

 

 この話は主に2019~20年に書いています。ところが2022年2月になってロシアがウクライナに武力侵略を開始しました。ロシアの発想はまるで18世紀か19世紀です。21世紀になってもこんな古臭いことを信条にしているしている指導者がいることは驚きでした。人類は300年たってもちっとも進歩していませんでした。うつ病になりそうです。

 

 次回は「宇宙人はどうして地球へ」です。