第6回 桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿

 「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」の根拠は何でしょう? 

 私は樹形のことを言っていると思っています。桜は放置しても美しい樹形に育ちます。むしろ切らない方が樹形が整うと言ってもよい。しかし、梅は放置すると徒長枝(夏枝)が伸びてほうきを逆さに立てような樹形になってしまいます。これでは花も実も付きが悪くなります。

 ちなみに「桜切る馬鹿」の根拠には諸説あり、桜は病気に弱く、枝を切るとそこから病原菌が入るので切ってはダメだとという説もあります。これも一理あります。なお、桜を諸事情で剪定しなければならない時もあるでしょう。その場合は晩秋~初冬(落葉~年末)に作業することをお勧めします。この時期は病原菌はほとんど活動しませんし、樹木も休眠期なので枝切のダメージを最小限にすることができます。

 園芸の本には「梅の徒長枝は切り落とすこと」と書いてあります。梅の花が終わると徒長枝が伸び出します。私は6月中旬頃(梅の収穫の直前の頃)に枝を切っています。早すぎると徒長枝が再び伸びますし、遅いと樹が弱るような気がします。「切り落とす時期は葉芽と花芽の区別がつく7月以降にせよ」と書いてある本もあります。残念ながら私には葉芽と花芽の区別がつきません。もちろん1月になれば誰でもわかりますが、前の年の夏では難しい。徒長枝を切り落としたら梅から枝が無くなってしまうと不安になりますが、普通はそうはなりません。しかし、私の「自己流」は普通ではない樹を扱っています。

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 左が夏まで徒長枝を切らず「逆さほうき」状態の梅の木、右は徒長枝を切り落とした後です。もう少しきれいに撮れるはずですので写真はいずれ交換します。言い訳させてもらうと、拙稿第1回と2回をご覧の方はお分かりの通り、これらの木は種から育てています。種から出た苗木の枝は全て徒長枝です。徒長枝ではない枝が出てくるまで4~5年かかりました。ことわざにも「桃栗3年柿8年 梅は酸い酸い13年」と言います。徒長枝には花も実もつきませんので、梅は実がなるまで年月がかかるのは理解できます。ただし、桃栗3年は早すぎるし、梅13年は遅すぎます。

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 左の写真に写っている梅の枝は全て徒長枝です。だからと言って全部切り落とすわけにはいきませんので、妥協して適当に切るしかありません。右の写真で棘のように出ている枝に花や実がつきます。これらを残してその上のまっすぐな枝は切り落とします。

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 この紅梅は樹齢30年以上の成木です。今年は昨年の気象条件が良かったらしく、きれいに咲いてくれました。下手くそな剪定だと思われる方が多いと思います。私も同感です。これにもやっぱり言い訳がありまして、梅の木らしくカッコつけて剪定すると、ヒヨドリが入り込んで花芽も葉芽も食べてしまうのです。従って鳥が入り込まないようにわざと樹冠が密になるように剪定しています。下の写真が問題のヒヨドリです。樹冠から飛び出した枝に芽がなくツルツルになっていることにお気づきと思います。

f:id:tanemaki_garden:20210308110350j:plain 昔 リンゴの皮や芯を置いて鳥を呼んでしまったのが失敗でした。ここ4~5年は餌を置いていませんが、鳥はそこまで記憶しているのでしょうか?メジロホオジロは来てもいいがヒヨドリは来てはダメと言っても鳥は言うことを聞いてくれません。自然との調和はかくのごとく難しい。

f:id:tanemaki_garden:20210308110913j:plain これはしだれ梅です。我ながらうまく行ったと思っている実例です。しだれ梅は徒長枝とそうでない枝の区別がつきません。なんとなく切ったら偶然成功しました。我家や隣家が写るのをできるだけ避けて写真を撮っていますのでいい写真が撮れません。

 剪定した方がいい樹は梅だけではありません。下の写真はハナカイドウです。

f:id:tanemaki_garden:20210308112258j:plain 下は2階から見下ろした写真です。

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 丹念に徒長枝を切り落としたら見事に咲いてくれるようになりました。ハナカイドウを植える方はたくさんおられますが、徒長枝を放置されている方がほとんどです。徒長枝を見分けるのは難しくありませんし、6~7月に1~2回切ればればよいので、大した手間ではありません。剪定されることをお勧めします。

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 ツツジとサツキは剪定時期が難しい樹です。花芽が6月にはできてしまいますので。それ以降に切ると花芽を切り落とすことになって花が無くなってしまいます。つまり花が終わったら直ちに作業しなければなりません。お正月の前に植木屋さんを呼んで庭をきれいにする方が多いと思います。その時期にツツジを切ってはいけません。写真は失敗例です。本当はもっと樹全体に花がつくのです。

 樹木の花芽形成の時期は決まっておりますので、剪定もそれに合わせて行う必要があります。

 

 次回は「畝を立てる方角は東西か南北か?」 野菜の話です。