番外 猫論/ネコは普段はニャーオとは鳴きません


今回は植物ではなくて動物の話です。

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  • 人になつく猫となつかない猫がいる。

 犬は群れで生活する生物なので自分を人間の群れの一員と認識していると考えられます。猫は単独行動する生物です。それではなぜ猫は人間の家族になることができるのでしょうか?

 我が家は木が多くて隠れるところがあるせいか野良猫が何度か繁殖しています。彼らの中には少数ながら人になつく猫が出てきます。生まれてから2週間以内に飼えば人になつくようになると書物にはありますが、2週間以上たってもなつく猫はなつきます。また餌をやっているくらいではなつかない猫はなつきません。そもそもの素質が違うとしか思えません。ちなみにイリオモテヤマネコはいくら可愛がって飼っても絶対に人にはなつかないそうです。 

 ロシアに狼を人に慣れさせる研究を行った人がいます。極まれに人に慣れる狼が出てきて、この遺伝子を調べたところ大人になる遺伝子が働いていないことを発見しています。子供の頃は狼でもあるいはトラでもライオンでも人に慣れるし抱くことができます。しかし、大人になるとそうはいきません。ペットになる動物はだいたい大人になり切れない動物ではないでしょうか。(爬虫類まではわかりません。)

 私の仮説は「人になつく猫は大人になりきれない猫である」ということです。猫が群れで生活するのは子猫の時に母親と一緒にいる時だけです。つまり、人になつく猫は人間を母猫と認識しているのではないかと考えます。父猫は子猫の面倒を見ませんので母猫限定になります。

  •  猫は毎日行動パターンを変える。

 猫を飼い始めてまず気がつくのは毎日の行動が変わることです。猫は良く寝ますが、寝る場所、寝る時間が毎日違います。猫ベッドなど買ってもそこに寝てくれるとは限りませんし、猫用おもちゃで遊んでくれるとは限りません。その代わり割と我慢強いところがあって、餌をやるときこちらが餌袋の封を開けるのにモタモタしていてもじっと待っています。
 猫は本来肉食獣で「待ち伏せ型」の狩りをします。鳥を捕る時は鳥が地面に降りるのを辛抱強く待って捕ります。このことで上記の行動パターンは説明できると何かに書いてありましたが、辛抱強いのはわかりますが毎日寝る場所が違うことが「待ち伏せ」とどう関係しているのか理解できていません。写真はヒヨドリを捕ってきた我が家の肉食獣マスカラの雄姿です。空中戦ができないのに鳥を捕るのはすごいと思います。

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 これはネズミを捕ってきて、いたぶって遊んでいるところ。

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 いずれも早朝 夜明けの前後です。この時間帯はネズミの行動が活発になるので、猫本来の本能で猫の行動も活発になると言われています。また両方とも雨上がりです。水が嫌いなくせに雨の時外へ出たがるのも狩りがしやすいのが理由かもしれません。

 ちなみに猫が獲物を捕って家に持ってくる行動は他の猫でもしばしば見られるそうです。飼い主への御礼という説がありますが、安全な所へ持ってきてゆっくり食べたいという説の方が有力と思います。猫の本性は肉食獣です。

  • 猫は近親でも乱交する。

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 マスカラは我が家の軒下で生まれたメスで人になつく素質を持っていました。そこで1歳の時に避妊手術(子宮摘出)して飼い猫にすることにしました。目の周りが黒いのでマスカラ(♀)と名付けました。この名前は家族には不評で、家族は短縮形にしてマシューと呼んでいます。ところが獣医が驚いたことには胎児が5匹出てきたそうです。まだ子猫でしたから5匹も産むことは無理だったでしょう。もう子供を産めないのはかわいそうですが、命を助けてやったのだから勘弁してほしいと思っています。この胎児の親は状況から見て実の父猫だったと考えています。
 この父猫はやはり野良猫で我が家には4兄弟で現れました。みんな白黒のぶちでした。模様からシロバナ(♂)、クロバナ(♂)、セグロ(♀)、ノドグロ(♂)と名付けました。雌猫セグロが1年ほどでいなくなり、他の雄2匹も次々といなくなって、最後はシロバナ1匹だけになって地域猫のボスのようになっていました。野良猫の寿命は5年くらいと言われています。今年になってから姿を見ませんので、多分この世にはいないと思います。話しを戻すと、雌猫セグロがいなくなったのは近親交配を避ける本能が働いたのではないか、マスカラは餌付けされ家から離れなかったので逃げ遅れシロバナと交尾してしまったのではないかと考えています。

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 写真はノドグロとマスカラ。ノドグロはマスカラの叔父さん(父親の弟)に当たります。

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 シロクロ4兄弟のうちノドグロは人になつく素質があり、上の写真のように我が家の中で寝たりしていました。飼い猫にしてやろうかと考えていましたが、シロバナとの縄張り争いで追い出され姿を消しました。大変残念でした。他の3匹は時々家の中に入ってくる程度に人に慣れていましたが、人にはなつきませんでした。

  • 猫は他の猫に対して、それが実の親であっても、縄張りを主張し威嚇する。

 我が家の肉食獣マスカラの母親は三毛猫ハハミケです。父親はシロバナと考えられます。シロバナは地域猫のボスなので庭に入ってきます。それに対してマスカラはものすごい勢いで唸って対抗しようとします。体格差が相当あるので私が加勢してやります。ハハミケに対しても同様に威嚇します。子猫の時は一緒に歩いていたのに1年以上たつと敵味方になってしまいます。このことは最初に申し上げた「人になつく猫は大人になり切れない猫である」という仮説と矛盾しています。しかし、単に記憶力が弱くて親を忘れてしまったのかもしれません。

 血統書付きの高級な猫を家の中で複数飼っている方をテレビ等で見かけます。長く飼われると縄張り本能を失うのかもしれません。我が家でもう一匹猫を飼うのは不可能と思われます。
 ハハミケはまだ時々見かけます。人にはなつきませんが、毛並みがきれいな三毛猫なのでどこかで餌をもらっているようです。
 シロバナはいなくなりましたが、白黒模様の野良猫は近所に何匹かいます。地域猫のボスは遺伝子をばらまいて去ったようです。

  • 猫がニャーオと鳴く時もある

 7年ほど前 やせた白黒の雌猫ハハブチが子猫4匹を連れて我が家の庭に現れました。それまでも野良猫は我が家の庭で何度か繁殖していましたが、この白黒一族は人に慣れる素質を若干持っていたようで窓に並んで家の中を覗き込むようなことをしていました。「無責任に野良猫に餌をやってはいけない」との原則に従い餌やりは自制していました。ハハブチは懸命に子猫を育てました。そして次第に瘦せていきました。ある日「ニャーオ ニャーオ」と声がするので見てみるとハハブチがセミを1匹くわえて子猫を呼んでいるところでした。今日の子猫のご飯はセミ1匹でした。このいじらしさに降参して餌やりを始めてしまいました。それを見て安心したのかハハブチは子猫たちを残して姿を消しました。その後のいきさつは上に書いた通りです。今我が家にいるマスカラはハハブチの孫と言うことになります。

 ニャーオという鳴き声を聞いたのはこの時くらいです。他はクウーとかギャオとかグルとか敵を威嚇する時にウーオとか鳴きます。マスカラは子宮を摘出してしまったのでサカリはつきません。従って、春の猫が出す赤ん坊が泣いているようなワーオー アーオーとは鳴きません。

  • 猫の知能には相当の個体差がある。

 マスカラの母親ハハミケは毛並みがきれいな三毛猫で人間から見ると美形です。ところが救いようがない馬鹿猫でした。家の中に入ってくるくせに人と遭遇するとパニックを起こして逃げ回ります。そしてどこかに逃げ込んで出てこなくなったことがあります。恥ずかしながら我が家は整理が悪いので隠れるところがたくさんあるのです。出勤する時 餌を少し出しておくと無くなってたので家の中のどこかにいましたが、見事に気配を消していました。結局1週間ほど隠れていました。窓を開けて静かにしていたら出ていきました。

 マスカラは比較的賢い方だと思います。例えば玄関から出て行って窓から入って来ます。空間がつながっていることを理解しているようです。また、普通の猫は家の中ではなつきますが屋外では逃げます。マスカラは屋外でも飼い主を認識します。

  • 猫は水が嫌いである。

「猫はこたつで丸くなる」と言う歌のせいで猫は寒さが嫌いということが常識化しています。しかし、実際は猫は寒さはそれほど苦にしません。雪が嫌いなのは水がダメだからです。猫の祖先はサハラ砂漠に生息していたリビアサバクネコでエジプト人が飼いならしたというのが通説になっています。もともと砂漠にいたので水がダメなのです。夏目漱石の「吾輩は猫・・・」で最後に猫がおぼれて死にますが、漱石は猫が泳ぎが下手であることを知っていたと考えられます。猫をお風呂に入れるなどということは虐待になります。

 ついでに言えば書物には飼い猫の爪とかヒゲを切ると書いてあるものもあるようです。これはとんでもない虐待だと思います。

  • 猫は牛乳を飲むと下痢をする。

 マスカラは子猫の時は牛乳を飲んでいました。ところが大人になってから牛乳を与えたら下痢を垂れ流して掃除が大変でした。腸内細菌が変わるようです。個体差があって牛乳を飲める猫もいるそうです。

  • 猫は夜行性ではない。

 猫は3~4時間寝て、3~4時間活動するパターンを昼夜関係なく繰り返します。そして朝方と夕方に活動的になります。困るのは夜中にたたき起こされることです。

  • 猫は日本の夏が苦手である。

 我が家のマスカラの場合は冬の寒さよりも夏の暑さの方が問題です。夏になると体調を壊して下痢したり昨年は頭に腫瘍を作ったりしました。幸い良性腫瘍だったので生き延びています。エアコンを入れると逃げ回って部屋から出て行こうとします。猫は人工の風を嫌うと獣医さんが言っていました。そして少しでも涼しいところを探してへたりこんでいます。

 今年の夏はこれまで以上に暑そうです。どうしたもんでしょう。今から心配です。

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