第3回 勝手に生えてくる植物

 庭の管理をする作業の中で一番大変なのは草取りです。特に真夏にやぶ蚊と闘いながらの作業は本当に大変です。しかし、これを手作業にしなければならない理由があるのです。

 庭の一角がこの写真のようになってました。さて、どれを残してどれを抜きますか? 

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 筒状の芽生えは紫蘭です。濃い緑はミヤコワスレです。両方とも初夏に紫色の花をつけます。細い葉はノビルです。ユリ科のネギの仲間で葉はネギのような香りがしますし球根は小さいがラッキョウのような味がしてビールのつまみになります。しかし、多すぎるのでここは抜きます。他にオランダミミナグサやカタバミなどが見えます。これらは雑草です。無益な殺生が嫌いな私でもこれらは抜くしかありません。この狭い空間に7種類以上の植物が生えています。

 草取りは単純作業なので頭が暇です。こんな作業をAIにやらせたらどうなるだろうと考えたりします。AIは同じか違うかの二択で物を見るのではないでしょうか。つまりAIが雑草を見た場合、対象を細かくファクターに分けて、それぞれのファクターについて記憶している標準タイプと比較して同異を判断して○○%一致しているからこれはXという雑草であると判断するのではないでしょうか。しかし、私は雑草を判断して抜く時にファクター分けして分析するなどしていないと思うのです。記憶の中にある雑草の形と比べて似ているか似ていないかで判断しているような気がします。人間の脳とAIは似ているか似ていないかの判断をするプロセスが違うのではないか。そんなことを考えながら草を抜いています。

 面倒くさければクサカキで搔き取ったりや除草剤を使って雑草を一網打尽にすればよいのです。しかし、そうしないことによっていろいろご褒美があります。

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 鳥が落とした種から万両が芽を出しました。それがやがて大きくなって冬には赤い実をつけます。
千両も同様です。千両と万両は除去しなければならないほど勝手にどんどん生えてきます。

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  ところで千両と万両は大変クセが強い植物です。千両は剪定すると実がならななくなります。これは2年目の枝に花・実をつける性質でだいたい説明できますが、枝を切ると明らかに実がつかなくなるので、それだけではないような気がします。万両は植え換えるとほとんど枯れます。花屋で鉢植を売っているように栽培している方がおられるので植替えは可能なはずですが、相当丁寧にやらないとできないと思います。私のような不器用は何度も失敗しています。要するに千両と万両は触らずに放置するのが良いということです。 

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写真中央の幅の広い葉はエビネです。最初は何株か購入して植えたものですが、庭のあちこちに生えるようになりました。春になると下の写真のように花をつけます。

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 これは春蘭です。葉だけを見るとイネ科の雑草と間違えそうです。

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ヒアシンスです。最初は栽培種を植えたと思いますが、繁殖するうちに先祖返りして原種に近い形になったと思われます。種をたくさんつけるのでまだまだ増えそうです。

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 左の写真でピンクの花をつけている木はニワウメ、同じくピンクの花はヒマラヤユキノシタ、白い花はスノードロップです。いずれも植えたものではなく勝手に生えたものです。右の写真では金糸梅と万両が絡まって生えています。いずれも勝手に生えてきたものでこんなにややこしいことをするつもりはありませんでした。勝手に生えた植物を大事に育てるものだから草取りが大変になるのです。

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 ヒガンバナです。冬の間はこのように葉を伸ばし、夏になると枯れて、秋に今度は花だけを咲かせます。この葉を雑草と思って抜いたり枯らしたりするとヒガンバナは絶えてしまいます。先ほどのエビネと同様に葉の形を覚えておかないと大事な草花を抜いてしまうことになります。

 他にも珍客が侵入して来ることがあります。左はツチグリというキノコです。一度だけしか生えてくれませんでした。右はマムシグサです。日陰に生えます。怖い名前ですが毒は無さそうです。

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f:id:tanemaki_garden:20210304101612j:plain このキノコの写真を撮ったのは3月はじめです。つまり冬に生えるキノコもあるということです。このような珍客に来てもらうためには落ち葉など放置しておく方がいいようです。

 このような管理をしていると狭い庭に植物の種類が次第に増えてきます。

 蝶や鳥が来るように花も実もある庭を造りたいと始めました。確かに蝶も鳥も来ますが、それよりも毛虫・イモムシが大量に来ました。次回は「虫たちと付き合う」です。

 

第2回 晴れた空に種をまこう

 第1回でご紹介した「さくらんぼの種を発芽させる方法」と同様な方法でいろいろな植物のたねを発芽させることができます。要するに鉢に土を入れて種をまき、屋外で乾燥しないように越冬させると春になって発芽するという方法です。

f:id:tanemaki_garden:20210206091150j:plainf:id:tanemaki_garden:20210206091439j:plain                    これはサネカズラです。西日本の山林に普通にあります。晩秋~初冬に宝石のように鮮やかな赤い実をつけます。毒は無いそうですが、なぜか鳥が食べた跡がありません。葉もつやがあってきれいなのでもっと有名になってもいいと思います。実をつけるのを楽しみに育てています。

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ヤブコウジです。十両の別名があります。千両、万両という名の木があるのでそれにちなんでいるのでしょう。森林の下草に混じって生えています。発芽率が悪く、何度か試みてやっと成功しました。大きくならない木なので鉢植えに適していると思います。

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マユミです。実の形が面白い。

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マユミの種は発芽しました。ところがこれがなかなか大きくなりません。まだ試行中といったところです。

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 黄色い実はコナシです。熟すと甘くなります。粒が小さいので腹の足しにはなりませんが、小鳥が食べに来ます。青い実はサワフタギです。湿ったところを好み沢をふさぐように生えるのでこの名があるそうです。青い実をつける木は珍しいので、これも庭の隅に欲しいと思っています。 

f:id:tanemaki_garden:20210206093253j:plain コナシは生えてきました。しかし、サワフタギがうまく発芽しません。これも試行中です。

他にもいろいろな植物が生えてきました。左から梅、ボケ、プルーンです。

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プルーンはスーパーで購入した生食用プルーンの種を使いました。

f:id:tanemaki_garden:20210206094349j:plain ロウバイです。梅よりも早くまだ寒いうちに強い香りを放つ花をつけます。種が大きいこともあり元気に発芽してきました。しかし、その後 なかなか大きくなりません。

f:id:tanemaki_garden:20210206094633j:plain ホウノキです。関東以北の山中にあり、葉も花も大きくて立派です。大木になります。発芽率が非常に悪いと書いてある本がありました。生えてきたのは幸運でした。

f:id:tanemaki_garden:20210206094852j:plain 五葉松です。盆栽に使う小型のものではなく大木になるチョウセンゴヨウという種類です。近年 マツノザイセンチュウの被害によりアカマツクロマツの林が激減しています。Wikipediaによるとチョウセンゴヨウは線虫を接種すると感染するが、実際に松枯病にかかっている例は少ないと書いてあります。もし耐性が強ければ代替として考えたらどうでしょう。巨大なマツボックリの中に大きな種を作ります。種は食用になるそうです。

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アンズが発芽してきました。芽生えは頼りなく見えましたが、その後 順調に生育しています。

f:id:tanemaki_garden:20210207094424j:plain カリンです。発芽率が良くてその後の生育も順調です。

f:id:tanemaki_garden:20210207094531j:plain 春を待つ種たちです。そろそろ植える場所がなくなってきたので、打ち止めにしようと思いつつ、種が手に入るとついついまいてしまいます。

 私は無益な殺生はできるだけしたくありません。その点で植物採集とか昆虫採集は趣味ではありません。しかし、路に落ちている種を拾うくらいなら許されるのではないかと思っています。もちろん、自然保護区からは、落ちた種であっても、持ち出してはいけません。第3回は勝手に生えてくる植物、つまり育てたい植物と雑草の違いの話です。

 

 

 

第1回 さくらんぼの種を発芽させる方法

 さくらんぼを食べた後、残った種を見て植えてみようかなと思ったことのある方はおられますか?これはそんな生き物に興味をお持ちの方に読んで頂きたいブログです。

 

この方法で本当にさくらんぼの苗ができます。最初にお断りいたしますが、これは私の発明ではありません。原典が思い出せませんが、他からの引用です。

手順1 さくらんぼを食べて種を出します。果皮と果肉には発芽を阻害する物質が含まれているそうですので、これを除去します。種を水に漬けるなどの前処理は必要ありません。

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手順2 種を土にまいて、種の大きさと同じくらいの厚みに土をかぶせます。植木鉢がいいでしょう。育苗トレイは土の量が少ないので水管理が難しい。4寸鉢(内径12cm)に7~8粒とちょっと密になるくらいが丁度いい。

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手順3 鉢を日陰において春まで乾かないようにします。乾燥すると種は死んでしまいます。水没しても死にます。さくらんぼの場合、6月から翌年3月まで9ヵ月も辛抱しなければなりません。週に1度は何も生えていない植木鉢に水をやります。難しくはありませんが、根気が要ります。

手順4 3月頃 暖かくなってきたら日の当たるところへ鉢を移動します。そうすると発芽してきます。発芽率は30%くらいですが、中には具合の悪い種もあるので、6月になっても出芽しなかったらあきらめてください。写真はたまたまさくらんぼの写真がなかったので、桜の種が発芽したところです。いろいろな樹木の種をこの方法で発芽させることができます。

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 外で越冬させるよりも種子を冷蔵庫で低温処理すればいいではないかと思われる方がおられるかもしれません。しかし、冷蔵庫では温度管理はできますが、湿度管理が案外難しい。また酸素を遮断すると種が窒息して死んでしまうので密閉はできません。結局 一般のアマチュアの方は自然に近い方法の方が間違いがないと思います。要するに、自然状態では鳥が果実を食べ、種子は糞と一緒に地面に落ちて翌春発芽します。それを人工的に行うのです。

手順5 5~6月頃 苗がしっかりして来たら、1本づつ別の鉢に移植します。日当たりのよいところで育てます。

手順6 翌年3~4月に地面に移植します。種をまいてから約2年後になります。この方法は費用も技術も要りません。ただただ時間がかかります。鉢植えは不可能ではありませんが難しいと思います。樹木は大きくなるということを想定して植えてください。隣の木までは2.5m以上は必要と思います。

 注意事項が2つ。

 1, 種から生えたさくらんぼの品種は元の品種とは異なります。親と子は似ているけど別人であることと理屈は同じです。同じ品種、例えば佐藤錦、の苗を作りたければ、接木や挿木でクローンを作るしかありません。しかし、ここに生えてきた品種は世界に一つだけの品種です。

 2, 実はこの方法で何回か試みましたが、地面に移植してから3~5年で全て枯死しました。土壌、気候が合わないことが原因かもしれませんが、品種改良を重ねて劣勢遺伝子が蓄積していて虚弱になっているのではないかと思っています。特に根部が弱く、台木に接木しないと大きく育たないのではないかと推測しています。

  次回から私の経験から得た園芸ノウハウをご紹介します。面白いと思って頂ければ大変うれしいです。第2回はいろいろな樹木の発芽事例です。

 

  この記事には6月になっても発芽しなかったらあきらめてくださいと書きました。しかし、これは桜やサクランボの場合でして、もっと時間がかかる植物もあります。私も驚いたのですが、スイフヨウが7月後半に発芽しました。片付けないで放置していたのが良かったのです。この仕事はある程度ずぼらな方がいいみたいです。