22世紀の田舎暮らし

 長野県 塩尻の土地の草取りをしながら22世紀にここで暮らすとどうなるか考えてみました。

 2100年には日本の人口はほぼ半分になるとの政府の予測があります。それも少子化対策が効いて出生率が上向くとか、10%は外国からの移民が占めるとか、とても楽観的なので実際はもっと寂しいことになると思います。それに加えて地方創生などは掛け声ばかりで大都市集中は止まらないので、田舎はポツンと一軒家ばかりになるでしょう。

 私の3世代後の子孫、名前は私と同じ繁茂君としておきます。彼はご先祖と性格が似て都会より田舎を好むらしく、物好きにもこの地に別荘を建てました。現在はこの地は市街化調整区域で家は建てられません。22世紀にはそんな制度そのものが無くなる前提です。

 信州の山中には高圧線の鉄塔が無数にあります。この高圧線の維持は大変な作業です。

 電気の送り先の人口が少なくなったので、これら送電ネットワークは大幅に縮小されるでしょう。ポツンと一軒家の人たちは、電線を張ると大変な費用がかかるので太陽光だけでなく、風力、水力を使ったマイクロパワープラントと固体電池のバッテリーを組み合わせてエネルギーの自給自足を行うしかなくなるでしょう。

 この写真は栃木県の今市工業高校が作った渓流を利用した水力発電装置です。日光の近くにありました。

 再生エネルギーはもともと大規模発電に向いていません。火力発電や原発の代わりにしようとすればバカでかい風車や山の斜面を覆って環境破壊するメガソーラーを作ることになりますが、一軒分のエネルギー供給はもっとこじんまりした設備で出来るはずです。

 この写真は風力発電装置です。将来はどんな風向きでも効率的に風力を利用できるような独創的な形の風車ができそうです。

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 買物は電気自動車を使います。ショッピングモールはまだ存在している前提です。通販は運送コストが高くなったので時々使う程度です。

 煮炊きには電力だけでは不足なのでLPG(プロパン)のボンベを時々買ってこなければならないでしょう。暖房には山の枯れ枝が燃料になります。「爺さんは山へ芝刈に」せっせと行くので家の周辺の山林はかっての里山に近くなるでしょう。なお、江戸時代には日本の山々は木々を燃料に使うのでほとんどハゲ山だったそうです。里山というのはもっと近世になってからです。

 水は結局 雨水と井戸水が頼りです。水道は引けません。井戸が無いところでは快適な生活は成り立ちません。

 ゴミの処理は手間がかかります。ゴミ回収車が定期的に来てくれることはありません。燃えるごみは自分で燃やします。ダイオキシン問題があるので灰を拡散することはせず1カ所にまとめます。生ごみは地面に戻します。幸い埋める場所はたくさんあります。不燃ゴミ、粗大ごみは処理場に持って行くか、回収に来てもらいますが有料です。こんな状態なので大量購入・大量消費の生活はやる気にならず、必然的にSDGsになります。

 排水は浄化槽を通してから流します。2023年の価格を見たらでは一戸用浄化槽は百万円程度でした。

 このように田舎生活は手間と労力それに初期費用がかかります。しかし、その後の電気代、水道代はかかりません。

 年に1020日しか滞在しないので、蓄電や貯水ができてゴミも排水もそれほど出ません。なんとか快適に住むことができるはずです。ただし、滞在時間のかなりの部分はマイクロパワープラントの整備や山での薪集めに取られるでしょう。こういう雑務を嫌がる人は田舎には住めません。 

 繁茂君の祖先が樹々草花を植えた土地は森林化しています。いろいろな樹種があるので自然林ではないことは一目でわかるでしょう。樹々が日光を遮断しているので雑草はそれほど生えず草刈りはほとんど不要だと思います。気候の温暖化は進行しますが、日本は幸いなことに砂漠にはならないようです。台風も増えるし豪雨と日照りが交互に来るような荒っぽい気候になると思います。

 繁茂君はこの土地の樹々を切り倒すのは惜しいので、わざわざ隣地を購入して家を建てました。隣地の地主はこの場所に全く興味が無かったので安価で購入できました。

 繁茂君は時々椅子を持ち出してこの奇妙な雑木林でじっとしています。高原なのでやぶ蚊は滅多にいません。ご先祖は花と実をつける樹を主に植えたので小鳥が頻繁に来てうるさいほどです。花の季節には蜂と蝶が来ます。野生動物の出現は当たり前になっています。猪や熊も出ますが、子育ての時期以外はそれほど危険ではありません。猿が厄介です。とにかく人間に近づくと餌があると学習されることは避けています。今日はこの土地のヌシであるアオダイショウが出現してゆっくり足元を這って行きました。

(写真は付近に出現したアオダイショウとカモシカ。いずれも10年前の撮影)

 

 この樹々を植えたご先祖はこれでご満足でしょうか。

  これはホウノキです。今はまだ高さ2m程度ですが、80年後に、もし生き延びていたら、とんでもなく大きくなるはずです。